大阪の道頓堀をうろついていた時、突然、
このト短調シンフォニイの有名なテエマが
頭の中で鳴ったのである…
それは、自分で想像してみたとはどうしても思えなかった。
街の雑沓の中を歩く、静まり返った僕の頭の中で、
誰かがはっきりと演奏した様に鳴った。
僕は、脳味噌に手術を受けた様に驚き、感動で慄えた。
百貨店に駆け込み、レコオドを聞いたが、もはや感動は還って来なかった。
…ほんとうに悲しい音楽とは、こういうものであろうと僕は思った。
その悲しさは、透明な冷い水の様に、僕の乾いた喉をうるおし、
僕を鼓舞する、そんな事を思った。
この文章は、有名な小林秀雄の評論、「モオツァルト」の中の一節です。
これが書かれたのは、昭和21年の夏ごろのこと。
こんなことって、あるかな…
少なくとも、小林秀雄にはあったんやろう。
道頓堀近くの百貨店って、髙島屋やろか。
(いろんなことを考えてしまいます)
こんな経験をした、小林秀雄にちょっとばかり嫉妬したりして…
今日は、彼の頭の中で突然鳴ったという、40番シンフォニーの第四楽章!