生きていることと、死んでいることは、
そんな大きな不思議なものをモーツァルトの
優しい音楽が表現しているような気がしましたの。
これは、宮本輝氏の「錦秋」という小説の中の
主人公のせりふです。
この小説の中には、<モーツァルト>という名前の喫茶店が出てきます。
店の主人は大のモーツァルトファンで、主人公の女性にいろいろと
モーツァルトについて語るのですが、39番シンフォニーのことを
「16分音符の奇跡」だと表現します。
この小説がきっかけで、39番をしっかり聴きなおしたいと思った私は、
文庫本を片手に、何度も何度もくりかえしCDを聴きました。
モーツァルトのシンフォニーといえば「40番」一辺倒だったのですが、
39には39の魅力、素敵さがいっぱいつまっていることをはじめて知ったのです。
特に好きなのは、第二楽章。
冒頭のせりふ、「生きていることと死んでいることは同じことかも知れへん」
そう主人公に言わせた作家の想いが伝わってくるような
静けさと哀感に満ちています。
交響曲 第39番 変ホ長調 第二楽章(アンダンテ コンモート)