追悼番組を見ながら、これを書いています。
音楽の背後にある、その人の精神性。
志の高さ。深遠なる世界。
(どうしてこんなに圧倒されるのでしょう?)
昔、中村さんの講演会に行ったことが
あるのを、ふと思い出しました。
ピアノの演奏についてや、音楽について、さぞかしいろいろなお話が
聞けるのでは?と、講師の友人たちと誘い合わせていそいそと出かけたのです。
ところが・・・
彼女は、まったくと言っていいほど、そういう話はしませんでした。
彼女が語ったのは、当時の国際情勢について。
戦争について。民族対立の問題について、などなど。
まるで、政治家やキャスターの講演会のような雰囲気でした。
そのときは、なぜ彼女がそんな話ばかりするのか、私には理解できませんでした。
お客は、彼女が講演するのだったら、100%音楽の話を期待して来るでしょう。
それに応えようとしない彼女に、どこか違和感を感じていたのかもしれません。
でも、今日の番組の彼女の演奏を聴いていて、なんとなくわかった気がしました。
彼女の関心ごとは、即、音楽へと結びついているのです。
それが「中村紘子」なのです。
常日頃から、世界の情勢のことを気にかけ、人間について深く思索する。
そういう生活の積み重ねが、この音楽性を生み出している。
講演会で語った内容は、彼女の生き方からして、とてもナチュラルなことだったのだ。
そう感じました。
中村紘子さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。